抹茶が世界でブーム 30年間の日本のデフレ経済との関係性とは?

抹茶が世界でブームになっているのを、原因と理由を読み解いていきたいと思います。

その理由の根本には「30年間の日本のデフレ経済」が影響していると思っています。

紅茶の輸入の仕事をやっていて思うのは、1998年に紅茶の輸入を始めてからこの27年間の間に、インドや中国の紅茶の値段は、2倍~3倍ぐらいになっています。

一方、日本の抹茶の値段は、ほぼ一定のままでした。1998年当時は、海外の紅茶は日本人にとってとても安いもので、その分、いい品質の紅茶がお手頃の価格で買うことができていました。

例えば、アメリカ人が嗜好品の飲み物として、「紅茶、コーヒー、抹茶」を飲むとしたら、昔は紅茶やコーヒーが安かった。でも、この30年間で値段は2倍~3倍になった。一方で、日本の抹茶の値段はほぼ値上がりしていない。相対的に、抹茶の値段がとても安く感じるようになった。

抹茶を生産するのは、日本人の器用な性格でないと生産できないと思います。その日本人が作っている抹茶が、海外から見るととても安いのです。

外国人が日本、京都にたくさん来るようになって、抹茶を飲む機会が増えて、

「世界にこんなおいしい飲み物があったのか!!! しかも安い!!!」

というのが外国人の実感だったと思います。

抹茶を作るには、被覆栽培といってとても手間がかかる工程があり、そこまで手間をかけるから、あの美味しさが生まれてくるのですが、30年の日本のデフレ経済の中で「値上げしたら売り上げが落ちるかも」との心配もあり、抹茶の値段がほぼ上がらずにきていました。

外国人によって「抹茶が再発見」されたのだと思います。

そして、外国に抹茶カフェなどのブームが起き日本から大量の抹茶が輸出されるようになり、京都をはじめ、抹茶の産地では抹茶の原料が不足するようになったのが2024年ごろから。ちょうどお米が不足した時と同じときですね。

2025年春の抹茶の卸市場での値段が前年の2倍ぐらいになりました。ようやく日本の抹茶、抹茶の生産者が日の目が当てられたのです。抹茶を作る生産者がいてこそ、抹茶を飲む人は抹茶を楽しむことができます。抹茶の値段が高くなっていっても、それは抹茶の生産者の方に還元されることになるので、とてもいいことだと思ってます。

卸市場の値段は2倍程度になりましたが、実際の抹茶の小売り価格はまだ昨年の20~30%アップ程度にしかなっていません。卸の会社や小売りの会社が少しづつ我慢して値上げ幅を抑えているんだと思います。

抹茶の値段が、この2025年時点のままなら、世界の人からしたら、紅茶やコーヒーよりも明らかにお買い得(値段に対しての美味しさが高い)状態にあるので、まだまだ、世界での抹茶ブームは続くと思われます。

2025年7月
紅茶専門店 京都セレクトショップ 代表/中野光崇

灯篭や蹲を選びに 京都の北山都乾園さんへ

灯篭や蹲を選びに、京都の北山都乾園さんに行きました。

北山都乾園(京都市) http://www.tokanen.com/

もともとこの会社を知ったのは、YouTubeの映像でした。YouTubeで北山都乾園の社長が灯篭や蹲(つくばい)の説明をとても興味深くされていて、ぜひ、行ってみて灯篭や蹲を選んでみたいと思ったのがきっかけでした。

行ってみると最高でした!
灯篭だけで100個以上はあって、
好みのものが選び放題。
こんな楽しい世界があったのかと。
生きている間に知れてよかったです。

全くどう選んだらいいかわからなかったのですが、担当の人がとてもよく説明してくれて、とても楽しい時間を過ごすことができました。

日本の松を買っているのは95%が外国人の実態とは?!

松を選びに、久留米市三潴町の松の生産者のところまで造園会社の方に連れて行っていただきました。

日帰りの1日だったのですが、松のこと、外国人が95%を買っていること、松の流通の実態までとても面白いことを教えてもらって1日になりました。

連れて行っていただいたのが、久留米市の三潴町という松の生産者の方の松の畑です。

そこは、松が100本以上はあるだろうという、松好きにはたまらない場所でした。

が、しかし!!!

その松の半分以上は、すでに「予約の印」がつけられていたのです。その予約の印はほぼすべてが外国人の買い手とのこと。

台湾や中国、また一部はヨーロッパのオランダの人が買い付けているとのこと。
松は、いまは95%が外国に行っているらしいのです。日本人のお客さんはわずか5%にしかすぎないとのこと。
ここでも、中華圏の外国人のパワーを見せつけられました。

松を選んでいると、3人の人たちが近づいてきて、
「ニーウォンナーリーライダ?(あなたはどこから来たの?)」
と中国語で話しかけられたので

「ウォーシーリーペンレン(僕は日本人だよ)」

と答えました。

松を買い付けしている台湾の方だったのですが、同じく松を選んでいる人を日本人とは思わずに、台湾か中国の人だと思ったらしいのです。久留米まで中華圏のお客さんがたくさん来ている証左ですね。

そこの松の生産者は、これまで見たことないほど、京都のお寺の庭園でも見たことないほど、芸術的ともいえるほどの立派な松がたくさんありました。ほぼ、外国人の予約がはいってます。

予約がはいっていない松の中かから、ちょうど、うちの庭に合いそうな横流れのいい松があったので予約ができました。本来、池の近くに植えて、松の横流れの枝を池の上に這わせるといい松ですが、自宅の庭には池はありませんが、枯山水風に作っているので、その砂利をレーキで模様をつけて池に見立てて、松を植えてみようと思いおます。

紅茶の仕入れのためにインドの山奥のダージリンまで行ったときに、紅茶の仕入れ以外にも、紅茶の生産や流通や現地の人の生活習慣や仕事の習慣を知れてとても面白く、またダージリンにも芸術品ともいえる紅茶との出会いがあったのですが、今回の松の予約でも同じような経験ができて松を買えたこと以外にもたくさんの楽しい経験をさせていただきました。

●今回の日帰りの松の旅でわかった面白いこと

・いま日本の松を買っているのは95%が外国人

・その外国人は日本の旅行中に日本庭園を見てそこに魅力を感じ自分の家に松を植えたいと思って買っていること

・日本のバブル頃までは松を買っているのはほぼ日本人だけで、その後に日本庭園を造る日本人が少なくなっていると同時に30年前から外国人の松のお客さんが増え始めたこと

・松の生産者の跡継ぎの人は30年前に日本人のお客さんが減りつつあり、今後、松の家業を継ぐのにためらっていた人もいたけど外国人のお客さんが一気に増えて仕事として成り立つようになっていること

・久留米の松の生産者の方は「仕立て」といって松の幹枝の形を作る仕事をしていること。仕立ての仕事は地元の造園会社の技術とはまた別の技術になるので松を選ぶときはすでに「仕立て」が仕上がっている者から選ぶ必要があること。また、庭に植えたあとは生産者の「仕立て」した松の形を維持すること。(松の仕立てや植え付け後の形の維持の剪定が全く違う技術でそれぞれ得意な会社が行っていることが驚きでした)

・松は植えた後の手入れが必要。年に2回は芽摘みや古葉落としなどの手入れをしないと、せっかく仕立ててもらった松の形が崩れてボウボウな松になってしまいます。その年2回の手入れに造園会社の方にやっていただくと費用もかかるため、昔は、自宅に松を庭に植えていることがステータスだったらしいです。京都の庭園で綺麗な松を見ても、それはきちんとした手入れがされているからで、綺麗な松を自宅用に買ってもその後の手入れが必要なこと。

・それだけ松の手入れに費用がかかるために最近では日本人は自宅に松を植える人が少なくなっていること。

・その分、お金持ちの外国人が松を大量に買い付けしているということでした。